黄砂に吹かれて|いちまる内科・呼吸器内科クリニック|山の街駅の内科・呼吸器内科

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黄砂に吹かれて

♪黄砂に吹かれて 聞こえる歌は

 忘れたくて忘れた・・・・。

とキムタクの奥さんが片思いの恋を歌っていた黄砂の季節がまたやってきました。

この季節の朝は瀬戸内海の上空に黄色い帯のような層が見えたり、駐車していた車の窓ガラスが黄色くすすけたように曇ったりします。

例年黄砂のピークは2月から5月ぐらい。スギ花粉の季節とも重なり花粉症の人にはダブルでしんどい季節です。

主に中国のゴビ砂漠などで風によって巻き上げられた大量の砂塵が偏西風に乗って運ばれ、日本などにゆっくり降下する現象を黄砂と呼びますが、近年はこの砂の粒子に中国などの大起汚染物質が付着しており、これらが健康に悪い影響を及ぼす可能性が指摘されています。ちなみに砂塵の大きさは3~10μmで、これらの粒子のうち粒の大きさが2.5μm以下のものをPM2.5と呼んでいるのです。

偏西風は大陸と海との寒暖差により空気の対流が生じ起こりますので、春ごろに強まり、夏になると弱まります。最近は中国の砂漠化が進み年々この黄砂の量も増加する傾向にあります。

ヒトの肺は肺胞という3μmほどの袋が3億個ほど集まって作られており、黄砂やPM2.5はこの奥底まで届くのです。肺に入った汚染された粒子が空気の通り道である気道にくっついて直接影響を及ぼすほか、血管内にも運ばれて人体に悪影響を及ぼします。

京都大学の研究では、黄砂の多い日には小児の喘息発作や入院のリスクが普段の1.8倍多く、小学生に限ると3倍を超えて多かったとのことです。また別の研究では血管に入った黄砂の粒が血管の内側の内皮を傷つけて、はがれた細胞で脳の血管が詰まる可能性も指摘されています。九州大学の研究では脳梗塞患者6352人を調べて、黄砂が観測されて3日間に病院に搬送された患者さんの数は普段の時期より7.5%高く、中でも言語障害や手足のまひを起こす重症タイプの脳梗塞患者に限ると、発症するリスクが普段の1.5倍に増えたそうです。

このほかにも黄砂の多い日は、喘息や慢性閉塞性肺疾患といった呼吸器の病気をもっている人やアレルギー性鼻炎の患者さんなどの症状が悪化するといった研究が多くなされています。

初めに言ったようにこの時期は花粉症も悪化する為に色々な症状が混ざり合って、本当に複雑な症状がでます。ましてや最近は新型コロナウイルスでも熱のないタイプの咳やのどの痛みだけの肺炎もよく見られることから、病院にもかかりにくく本当に悩ましい季節です。

対策としては、花粉症のようにアレルギー薬や抗ロイコトリエン薬などが効くものでもなく「吸い込まない」しかありません。コロナ対策でもあるマスクをしっかりとつける、黄砂の多い日には洗濯物を外に干さない、なるべく窓を開けないなどの工夫も有効です。但しコロナでは換気も大切とされていて、すべてを両立するのは非常に難しいとしか言えません。

自分ではどうすることもできない目に見えないものに脅かされることが多く、つらい季節ですが季節は必ず移りかわります。ウイルスも黄砂も空けないものはありません。今できることをきちんとしながら、輝かしい季節を迎える為に一緒に頑張りましょう。