藤の紫と便秘と
- 2022年4月27日
- お知らせ
すっかり暖かくなり、まもなく5月になろうとしています。
現在クリニックは改装中で待合室はむき出しのコンクリートの箱になってしまい、見ていると何だか寂しくなってしまいます。
そんな色のない日常の中で今朝、有馬街道をクリニックに向かって車を走らせていると、山の木々に紛れて美しい紫の花がいたるところにぶら下がっているのが見えました。
藤の花の季節ですね。
藤はマメ科の植物で他の木々に巻き付いて花を咲かせます。なぜか日本の西南部に自生するヤマフジ以外は必ず茎は右巻きだそうです。一つの茎からたくさんの葉や花を咲かせます。
我々日本人はこの巻き付く性格を利用して、藤棚として昔から紫の雨のような美しい花の姿を楽しんできました。
調べてみると藤の薬効は便秘と胃がんだそうです。だからと言ってそのまま煎じて飲むのはお勧めしません。あくまでも薬効として載っているだけです。また、胃がんの発見はもちろん胃カメラがベストです。
ところで、便秘に苦しんでいる方は非常に多く、私も日々たくさんの下剤を処方します。
農耕民族独特かもしれませんが、日本人は欧米人に比べて腸の長さが長いといわれています。このために便秘も多いのでしょうか。
腸は副交感神経などの作用で蠕動運動をし、食べたものを胃から小腸、大腸、直腸へとリレーのように渡してゆき、便として排泄します。腸ではこの間に栄養や水分を吸収し我々の生命の維持に非常に大きな役割を果たしています。
この腸の動き自体が遅くなると、水分の再吸収が進みすぎカチコチの便になり、詰まってますます出にくくなります。またガスの産生が進みおなかが張って痛く苦しい思いをします。これが便秘といわれるものの一つです。もちろん便秘の原因はまだまだ色々とありますが、外来では便秘の薬を求める人が多くいて、決して特別な病気や恥ずかしい病気ではなく日常的にあり得る普通の状態です。
治療としては、腸の動きをよくするセンナという植物からの抽出成分を原材料にしたいわゆる「下剤」や、便の水分を増やして運びやすくする酸化マグネシウムのような「緩下剤」があります。最近では新しい種類の便の水分調節剤なども出てきており、適切な治療ですっきりと楽しい健康な生活を送ることもできます。
藤の美しい紫をみて下剤を思い浮かべる人はまれだとは思いますが、春の素晴らしい色彩を今ひと時たのしみたいものですね。