新型コロナワクチンー打つべきか、打たないべきかー
- 2022年3月15日
- お知らせ
皆様こんにちは、3月の中旬にもかかわらず、一気に夏のような暑さになったりして
毎日の服選びにも苦労する今日この頃、いかがお過ごしでしょうか?
さて、本日は新型コロナワクチンについてのお話しです。
オミクロン株以降、コロナ感染者の数は爆発的に増え、ようやく減少傾向になりつつあります。
しかし未だに兵庫県は1000人以上の方が、毎日新型コロナ陽性となっておりまだまだ予断を許さないのが現状です。いくら気をつけて過ごしていても、家族の誰かがかかれば家庭内感染がおこり、知事だけではなく、いつ何時誰が感染してもおかしくない状態です。
国の方針としてはコロナの感染や重症化を防ぐためにワクチンを接種することを強く勧めており、12歳以下の子供の接種が始まったり、3回目の接種を終えた方もだいぶ増えました。しかし先に述べた様に毎日の新規感染者数は依然高いままであり、中にはオミクロン以降のコロナにはワクチンは効かないんじゃないかと、その効果を疑問視する声も聞こえます。
そもそもコロナワクチンってどういったものなのでしょう?
元々コロナウイルスは普通に存在する、冬風邪のありふれた原因ウイルスでした。
2019年末に中国に出現し世界に一気に広がった新型コロナウイルスは、高率に肺炎を起こしたり血栓症を起こしたりと命に係わる様な重症化をしやすい殺人ウイルスです。厄介なことに非常に変異しやすく2週間に一回変異株が発生するともいわれています。
この変異というのはウイルスのなまえの由来でもある太陽のコロナのような突起=スパイクのたんぱく質の形が変わることを言います。通常の風邪コロナウイルスはここまで多数の変異が同時に起こるようなものではなかったのですが、新型コロナは人工的にプログラミングされたように異常にこのスパイクの形が同時多発的に変化します。
このスパイクはウイルスがヒトの細胞にとりついたり侵入したりするときに大事な役割を果たします。
ヒトの体の中では、免疫=身体を守る兵隊であるリンパ球がウイルスに出会うと、このスパイクの形を記憶し信号を飛ばし、このスパイクを持っているウイルスを見つけたら、ウイルスを食べたり専用の手裏剣のような武器を大量に製造しウイルスを攻撃します。この武器が抗体です。
ワクチンというのは身体の中にウイルスそのものを弱めて入れたり、ウイルスの死体を入れたりして、ウイルスに特有の形を免疫細胞におぼえこませて、次に侵入した際に備えて専用武器=抗体を用意するものです。
いわゆるコロナワクチンはウイルスの突起の形そっくりに移したタンパクを科学的に作り、その設計図を3つ以上入れ込んだものです。ですからコロナワクチンを打ってもコロナにかかる事はありません。また、筋肉注射をするのはワクチンに含まれるタンパクを創る設計図を基に、筋肉内の細胞に含まれる材料を使って同じ形のタンパクを合成して身体に行きわたらせ、身体にウイルスの情報を教えるためです。
抗体があれば、ウイルスが入ってきても武器の用意と武器を創る用意ができているので、ウイルスが爆発的に増えても、そのウイルスを次々と破壊してウイルスの数を減らして身体を守ることができるのです。これが重症化を防ぐということです。また、少量のウイルスが侵入してもすぐにそれを見つけて、やっつけることで身体が異常を感じる前にウイルスを駆逐したりします。これが発症予防と言われます。
インフルエンザもそうですが、残念ながらワクチンを打ってもしばらくするとこのウイルスの記憶と武器の製造体制も弱まってきます。そこでインフルエンザワクチンは毎年、コロナワクチンは半年ごとにワクチンを身体に入れます。
さて、話を戻しますがオミクロン株発生以降「3回目のワクチンを打ったのにコロナにかかる」ことが頻繁に起こるようになりました。実際私も連日、3回目ワクチン終了後の患者さんの新規感染者の発生届を多数保健所に書いて送っていました。
これは、一つにはオミクロンはワクチンに入れているスパイクの部分が全て形を変えてしまっているためかもしれません。せっかくの設計図がもはや古くなってしまい、変わってしまっているために専用武器が合わず、ウイルスが侵入してもやっつけることができずに感染してしまうともいわれています。ですからワクチンはコロナの発症予防効果はあまりないという意見も、ある意味正しいといえます。
しかし、ワクチンを打った人、十分抗体を持っている人が重症化しなかったり、軽症で済んだり、発症自体しなかったということも実際にたくさんあります。
これは、コロナウイルス自体が感染力は上がっても肺炎や血栓症などをおこして重症化する力自体が弱まってしまっている(今までの変異ばかりして毒性が弱まらなかったこと自体が異常で、自然界では広まれば弱くなるのは当たり前です)ということが原因かもしれませんが。ワクチンにより免疫自体が高まっており、また抗体が有効とまではいかないまでも、全く効かないということではなく身体をまもってくれているのかもしれません。
正直このことについてはまだ良くわかっていません。しかし実感としては重症肺炎の人が減ったり、肺炎を起こしているのに熱がなく咳だけの人が多い(つまり重症化しきらずに踏みとどまっている)と思います。コロナの最初のころにあった高熱+咳=重症肺炎とはかなり様変わりしています。
厄介なことに、この症状が出にくいということはよいことばかりではありません。全く無症状で元気な人が実はコロナウイルスに侵されていて、気づかずに大量のウイルスを周りにばらまいてしまう現象(この人たちはスーパースプレッダーとも呼ばれます)がおこります。これがいわゆる老健施設や病院、学校でおこるクラスターの原因になっているのです。
ですから、今は熱などはあまりあてにすることができず、接している人が感染者かどうかが非常にわかりずらいのです。つまり普通に生活していてもいつの間にかウイルスに接して、ウイルスが身体に侵入している可能性があるのです。
そこで表題の「ワクチンを打つべきか打たないべきか」という問いに関しては、あくまで私の私見ですが、わたしは打つべきだと思います。
ワクチンの副作用・合併症は確かに怖いです。様々な血栓症、心臓の病気、血管の病気、神経の病気、アレルギーなどの発生も報告されています。しかしその発生率は数万から数十万回に一回とされています。インフルエンザのワクチンでも、子宮頸がん予防ワクチンでも同じような合併症はあるのです。そう考えるとワクチンを打って危ない目に合うよりも命の危険から守られる可能性の方がはるかに高いのです。
実際自分の子供に打つかと言われたら迷います。しかしどれだけ気を付けても感染のリスクをゼロにはできない以上、かかった時に命が救われる可能性の高い方にかけたいと思います。デルタ以前の性質をもったウイルスもいなくなったわけではありません。まだ一回も打っていない子供には抗体を付ける為にも打てるなら打つべきですし、3回目の人もウイルスに対する免疫システム自体が活性化すると思われます。そういう意味でわたしはワクチンは打つべきだと思っています。
但し、気を付けないといけないのはワクチンそのもというより、その溶かしている基剤にアレルギーのある人、1回目にアレルギー性のショックを起こしたような人は打たない方が良いと思います。また実際にコロナにかかって治った直後の人はワクチンよりはるかに抗体価、つまり免疫力が高まっているといわれていますので、アレルギーなどのリスクが高い人はコロナ治癒後何か月もたっていないのならば、急いでワクチンを打つ必要はないと思います。
以上、まだまだワクチンの是非についてはわかっていないことも多いので、皆様ご自身でよく考えて決めるしかないのですが、参考になれば幸いです。
最後に今後のコロナ治療については、おそらくインフルエンザのようにワクチンはあくまでも予防と重症化予防の為に打ったり、打たなかったりを各自が選択するようになり、ワクチンというより、かかってしまったらコロナ治療薬を飲んで休むという方向に医療はシフトしていくものと思われます。但し、今は私のクリニックでコロナの薬を出したくても出せません。まずは国に申請して、施設が認められて初めて処方ができるシステムで、許可が出るのに何か月もかかったりします。これまでコロナ治療をがばってこられた医療機関以外では、まずコロナ薬が出せません。感染症法で5類に分類される等して、こういう仕組みが変わらないとコロナ医療は進まないのかもしれませんね。
ヒトの社会で何が起こっても、時は経ち、季節はどんどん変わって行きます。はやくマスクの要らない世の中になればよいですね。